2011年8月25日木曜日

‘Where, after all, do universal human rights begin? In small places, close to home -- so close and so small that they cannot be seen on any map of the world. Yet they are the world of the individual person: the neighborhood he lives in; the school or college he attends; the factory, farm or office where he works. Such are the places where every man, woman, and child seeks equal justice, equal opportunity, equal dignity without discrimination. Unless these rights have meaning there, they have little meaning anywhere. Without concerted citizen action to uphold them close to home, we shall look in vain for progress in the larger world.’
Eleanor Roosevelt at the presentation of "IN YOUR HANDS: A Guide for Community Action for the Tenth Anniversary of the Universal Declaration of Human Rights."

2011年7月19日火曜日

雇用主に宛てて発送した書面

  労働審判事件およびその他の訴訟の記録ファイルについて 
 2011年(平成23年)6月24日(金曜日)、6月27日、また7月11日からの10日間ほどの休業について、使用者側に6月19日付けの「2011年6月と7月の就業の日程と場所について」と題する書面などで就業場所その他について回答を求めたにもかかわらず、何らの応答も説明もなく、残念ながら6月24日の分の賃金の支払いもまだ確認されておりません。本年6月24日は解雇された2004年(平成16年)6月24日から数えてちょうど7年目にあたることもあり、その日と、同じく勤務場所の通知がなかった7月11日と7月15日に大阪地方裁判所に赴き労働審判事件(大阪地方裁判所平成18年(労)第69号地位確認等請求労働審判事件)の記録を閲覧し、関連する他の訴訟記録とも照らし合わせながら、解雇された当時や労働審判の手続きを振り返ってみました。
 突然解雇された理由も労働基準法に反して長らく示されず、2年半以上経過した労働審判の場で初めて明らかにされましたので、事件を構成する出来事の時系列を順にたどるよりも、労働審判における使用者側の業務委託契約でありその解除であったという、雇用通知書を発行し、年次有給休暇を付与していた事実からすれば常識からかけ離れた感のある主張への反論に追われていましたが、裁判所の記録を年月が経過した時点で冷静に見てみますと、事象全体の性格を的確に把握することができるように思えます。この際、本年6月30日付けの先の書面と重なる部分もありますが労働審判や裁判の資料を添えて事実関係をできる限りわかりやすく記し、記録として整理しておきたいと思います。
 労働審判の資料として番号1の事件記録表紙、2番の労働審判手続き申立書、資料番号3の平成16年6月2日付けで(財)**********大阪兵庫事業部長が医師業務委託契約書への署名捺印を求め、期限までにそうしなければ就労を打ち切ることを通告した文書を取り上げますが、労働審判事件における焦点はやはり7年前の6月24日の出来事でしょう。改めて申すまでもなく、その頃の勤務は労働安全衛生法などに基づく定期健康診断を事業所に出向いて実施するのがほとんどでしたから、健康診断が実施される日時と事業所の場所をその都度事前に知らされないことには就業できません。その日時と場所を示す勤務予定と地図は週ごとに健康診断が実施される前々週の末までには自宅に届くことになっていました。それがなければ就労することができない重要な意味のある勤務予定表と地図(6月28日(月曜日)からの分)がその前の週の土曜日(6月19日)までにいつもは届くはずであるのに、その時は翌週の木曜日つまり2004年(平成16年)6月24日まで届いていませんでした。予定表などが送られて来ずに退職せざるを得なかったという他の医師の話も聞いていましたし、それらの書面が送られないことの重要性は関係者みなが承知しているはずでした。その事態はただごとではないので6月24日木曜日の午前中に健診班の責任者に如何なる理由によるものか確認するよう申し出ています。別の事業所に移動したその日の午後一番(記録によれば13時20分頃)にそれについてのやりとりがあり、その直後に解雇理由となった健康診断受診者のクレーム(13時30分から健診が始まり30分程の間に)が発生したことがわかります。クレームの内容はそれ以降再三求めたにもかかわらず労働審判まで明らかにされることはありませんでしたが、その受診者のクレームやその元になったとされる事実が起きる前にすでに就業の予定とその場所を通知しないことにより実質的に仕事を打ち切る措置はとられていて、その措置についてセンター側に説明を求めたすぐ後にその問題の一件が生じたことになります。健診の予定表と事業所の地図が送られて来ないこともあり得ないことでしたし、そのような受診者のクレームも20年以上の勤務において一度も経験したことがないことであり、それらの出来事が1日の内にたて続けに起きています。
 その頃交付されました、労働審判において甲第6号証として提出されています2004年(平成16年)6月2日付けの文書(資料3)には、医師業務委託契約書に署名、捺印し、同年7月1日までに返送しない場合は、「業務を委託頂く意思がないものと判断し以降の業務委託は見合わすこととさせていただきますのでご了承願います。」といった使用者側のなりふりかまわない姿勢とその意図するところを如実に物語る文言も見受けられます。表向きの解雇理由となった受診者とのトラブルがあってもなくても、就労打ち切りの判断はすでに下されていて、「偶然その日に生じた、健康診断を実施していた事業所の女性受診者に大きな声を出したなどというクレームに端を発し、当事者本人に事実関係が確かめられることもないまま次の週まで事後処理が続いた騒動」はただ単にその理由付けをするために用いられただけである事実が浮かび上がってきます。以上の資料はその日の出来事の性格を見極めるのに充分な判断材料を提供してくれます。
 なお、その日解雇の通告があっただけで受診者のクレームの内容をはじめ何も本人には知らされなかった中で、使用者側関係者の慌ただしい動きがあったことが乙第14号証から乙第19号証に記録として残っています。労働審判手続きを執ることによって初めてそれらの事実が明らかになったわけですが、事実経過や手続きの適正さを検証する上で重要な部分もありますが今回ファイルに綴じるリストには含まれておりません。
 長期に及ぶ解雇が生活に及ぼす深刻な影響を考えれば、労働審判事件がいかに密接にその他の訴訟に関連しているか想像することは難しくないでしょう。2004年6月24日の解雇によって住宅ローンなどの返済が滞るというようなことがなく、充分な経済的な信用力が維持されておれば、極めて良好な取引状況であったものが突然に取引が停止され、その後わざわざ遠方の裁判所に訴えを提起された東京地裁での銀行系のクレジットカード会社との訴訟(東京地方裁判所平成18年(ワ)第28197号求償金等請求事件平成20年(ワ)第5609号損害賠償請求反訴事件)も経験せずに済んだでしょうし、外国人登録証明書の提示がないとか、口座開設目的がはっきりしないとかの理由で銀行口座の開設さえできなかった******銀行との争い(大阪地方裁判所平成21年(ワ)第18594号損害賠償請求事件)も必要とされることはなかったでしょう。後者は先日ようやく口頭弁論を終結したばかりですが、正当な根拠を見出すことができない解雇がなければ、二つの裁判併せて5年近くその対応に追われることはなかったはずです。
 資料番号4の大阪地方裁判所平成18年(ワ)第11556号貸金等請求事件取下書と番号5の平成20年(ワ)第5609号損害賠償請求反訴事件反訴状を東京地裁での訴訟に関係する記録としてここで触れておきます。
 東京地裁での求償金等の請求事件の時系列を労働審判事件の手続きのそれと比較してみますとまるで示し合わせたかのように時期的に重なり合うところが見受けられます。この間の経過は東京地方裁判所平成18年(ワ)第28197号求償金等請求事件の反訴状(平成20年(ワ)第5609号損害賠償請求反訴事件)(資料番号5)にまとめられていて、資料4の大阪地裁への取下書は大阪簡易裁判所での支払い督促に異議を申し立てたとみるや、一旦取り下げて遠方の裁判所に提訴し直す脱法行為の端緒となったものです。雇用契約上の地位確認等を求める労働審判手続き申立書を大阪地裁に提出した2006年(平成18年)11月30日の翌々日にあたる同年12月2日に大阪簡裁から移されて大阪地裁の別の部で取り扱われていた貸付金等の返済を求める訴えはこの取下げ書でもって一旦取り下げられ、同年12月14日付けで東京地裁に提起し直されています。労働審判事件の第1回期日の1週間後の2007年(平成19年)1月26日午後1時10分を第1回口頭弁論期日とする東京地裁の呼出状等が2006年12月29日に当方に送達されています。そのおかげで労働審判手続きがなされた2007年(平成19年)1月から3月(第1回期日1月18日、第2回期日3月2日、第3回期日3月15日)までは2007年1月9日に移送の申立て、1月30日に即時抗告、2月13日に抗告許可申立てと特別抗告、3月5日に抗告許可申立理由書と特別抗告理由書の提出といずれも棄却された東京地裁、東京高裁、最高裁への移送関係の諸手続きに追われていました。これも何かの巡り合わせと言えるでしょうか、復職できるか否かの問題が最も重要な局面にさしかかっていた時期にそこから派生した別の問題への対応に集中して取り組むことを余儀なくされています。不当な解雇がもたらした、ともすれば忘れられがちな一つの影響、後遺症はこのようなところにも現れていることが確認できます。
 最近まで口頭弁論が続いた******銀行との争いについての資料として6番の大阪地方裁判所平成21年(ワ)第18594号損害賠償請求事件訴訟記録表紙と資料7として同訴訟の訴状を挙げます。最初に銀行を訪れた際には犯罪収益移転防止法にあるとおりに健康保険証を提示して手続きをとっているのに外国人には外国人登録証明書が特に必要だと言って口座開設に応じず、2度目にそれを持参して訪れた時には今度は口座開設の目的どうのこうのといった別の理由を持ち出して口座開設を拒否したことは、銀行側がどのように理由を取り繕ってみても、良識があれば裁判で争われるまでもない明らかに行き過ぎた行為であったと言わざるを得ません。ここでも労働審判事件と同じようにとって付けたように理由を後から付け加えることがなされています。銀行側代理人は当初従業員の陳述書を元に原告が通称名を使用したため外国人登録証明書の提示を求めたと主張しましたが、それが現実からかけ離れているとわかるとその主張を撤回し、従業員の陳述書も訂正されました。(資料8)
 同銀行は在日の「外国銀行」として一世紀以上の長い歴史があり、同訴訟の原告である当方と同じく外国人登録制度の適用を受ける立場にある同銀行の多くの関係者自身の人権に関わるばかりでなく、同銀行の業務における一つの障壁としてその弊害を切実に認識しているはずであるにもかかわらず、外国人登録証明書の常時携帯義務などその制度の歴史的な経緯に理解があるようには見えないことも不可解な点として残っています。
 証人や当事者としての同銀行の従業員の証言もともに質問に対する不確かであいまいな受け答えに終始し(資料9は証言の一部)、外国人登録証明書を持参していなかったり、口座開設目的を明確に述べなかったために口座開設ができなかった他の事例を具体的に挙げることができない一方で、外国籍の場合でも外国人登録証明書がなくても口座開設をしたことがあることを認めたりしていますから、やはり一消費者に対する金融機関の行為として公平性に欠け合理的に説明できないものであったことは否定できないでしょう。この件について3つの資料を取り上げましたが、その争いを引き起こした元々の原因が何であり、その責任の所在はどこにあるのかについてここでも言及しないわけにはまいりません。
 番号10の大阪地方裁判所平成18年(労)第69号第3回労働審判手続期日調書(調停成立)正本(平成19年3月20日作成)と番号11の平成23年5月24日作成の同期日調書正本の二つの調書を見比べていただければわかりますように、2007年(平成19年)3月に当事者に送達された調停成立の労働審判手続期日調書は労働審判官(裁判官)の認印と書記官の押印がなく、二つの個所において明らかに労働審判規則第25条第3項の規定に反して作成されており、過去の同調書の送達手続きはそのままにしておくことはできないと思われました。実際民事訴訟などの調書の認印押印は文献を調べてみましても一般人が普通に想像する以上におろそかにできない問題であるようでした。そこで本年6月1日付けで裁判所書記官に規則通りに作成された期日調書正本の再送達を申し出ましたが、これに対し、裁判所書記官は最高裁の判例などを元に、本年6月16日付けで「再送達はしない。本件は当事者双方につき、送達が完了している。」との処分を下しました(資料12)。結局のところ、2007年(平成19年)当時の調停成立の調書の送達が法的に有効であったことが裁判所によって再確認された形になりましたが、規則に則った手続きを重視するはずの裁判所の当初の送達手続きの不手際は、一市民にとっては余分な手続きを必要としたもののかえって貴重なものとして記録に留めておく意味があるでしょう。
 7年前の労働審判事件の記録はその他の記録とともにはたとえば銀行との訴訟のように未だにその後遺症に悩まされている身にとっては、今日の直面する課題に結びつく部分も少なくありません。また、今もその誠実な履行を何よりも優先して求めなければならない調停条項については言うまでもなく、その他にも、使用者側の行為に労働審判の結果が生かされずに、相変わらず繰り返されているところなど少なからずあるようですので、掛け替えのない教訓を与えてくれる資料として常に念頭に置いていただかなくてはならないものです。ほんの一例として労働審判での争点であった「業務委託契約」の件を取り上げても、未だに数多くの非常勤の医師との間で使用者が「業務委託契約」を結んでいるとすれば、それは労働関係の法理に反するばかりでなく医療関係の法規である医療法や医師法などをも無視した行為ということになるのではないでしょうか。そのような争点につき主張立証を尽くしたことも労働審判の一つの成果と言えるでしょう。
 使用者に以前の出来事を折に触れ思い起こしていただくためにも、これらの資料を丁寧に記録に綴じておくことは今後の勤務にとって欠かすことのできない作業です。以上の趣旨により、労働審判およびその他の記録、資料をファイルに綴じて本書面とともにご送付申し上げますので、ご査収下さいますようお願い申し上げます。
 追記)労働審判事件とその他の記録を裁判所で点検し、この文書をほぼ作成し終えた7月16日(土)に8月分の勤務予定が送られてきました。どうやら過去の記録に注意を傾ける以上に目の前の厳しい現実に対処しなければならないようです。一ヶ月に3日間の就業しか認めない8月の予定ではどのように解釈しても労働契約上の地位が尊重されていることにはなりませんから、使用者は裁判所での取り決めにも従わないということでしょうか。こちらの立場としましては差し当たり使用者に改めて調停条項を遵守すること、就業日数を確保し、就業場所を通知すること、使用者に帰責事由のある休業について民法536条第2項所定の賃金を支払うことなどのしかるべき措置を求めるほかありません。2011年8月の勤務予定は本書面で明らかにしました使用者側の行動が繰り返されていることの証でもありますから、その写しを現在進行形の記録としてファイルの最後に綴じておきます(資料13)。                              以上
 ファイルに綴じた資料と番号
1 大阪地方裁判所平成18年(労)第69号地位確認等請求労働審判事件記録表 
  紙
2 大阪地方裁判所平成18年(労)第69号地位確認等請求労働審判事件労働審  
  判手続き申立書
3 平成16年6月2日付けで(財)**********大阪兵庫事業部長が医 
  師業務委託契約書への署名捺印を求め、期限までにそうしなければ就労を打ち  
  切ることを通告した文書
4 大阪地方裁判所平成18年(ワ)第11556号貸金等請求事件取下書
5 平成20年(ワ)第5609号損害賠償請求反訴事件反訴状
6 大阪地方裁判所平成21年(ワ)第18594号損害賠償請求事件記録表紙
7 大阪地方裁判所平成21年(ワ)第18594号損害賠償請求事件訴状
8 同訴訟において事実関係が訂正される前の証人の陳述書(乙第7号証)と被告 
  ら準備書面⑶および事実関係が訂正された後の証人の陳述書(乙第8号証)と 
  被告ら準備書面⑸
9 同訴訟証人尋問調書の抄本
10 大阪地方裁判所平成18年(労)第69号第3回労働審判手続期日調書(調   
   停成立)正本(平成19年3月20日作成)
11 大阪地方裁判所平成18年(労)第69号第3回労働審判手続期日調書(調   
   停成立)正本(平成23年5月24日作成)
12 平成23年6月1日付けの労働審判手続期日調書(調停成立)正本再送達上 
   申書とそれについての平成23年6月16日付けの裁判所の処分の謄本
13 平成23年8月分出勤予定表
                   2011年(平成23年)7月19日
〒577−****
大阪府東大阪市***丁目**番*号
    梁   視  訓   印
〒520−****
滋賀県********番**号
財団法人 **********
 理事長  * *  *  殿

2011年7月16日土曜日

大阪簡易裁判所に訴訟を提起してから紆余曲折を経て結審した大阪地裁平成21年(ワ)第18594号損害賠償請求事件を振り返って

訴    状

              〒577-****
              大阪府東大阪市***丁目**番**号(送達場所)
    原 告     梁  視 訓
TEL 06(****)****
FAX 06(****)****

              〒140-****
              東京都品川区****丁目*番**号  
              *******センター
   被 告  C 銀行株式会社
              上記代表者代表取締役  ***・****
              〒542-****
              大阪府大阪市中央区*****丁目**番**号
              *********ビル 
              ******銀行***支店(就業場所)
                  被 告      K 
損害賠償請求の訴
訴訟物の価額  金100万円也
貼用印紙額   金  1万円也

請 求 の 趣 旨
1 被告らは,原告に対し,連帯して、金100万円及びこれに対する平成21年9月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は,被告らの負担とする。
との判決及び仮執行の宣言を求める。

請 求 の 原 因
1 原告は,日本で生まれ育った外国籍の医師。被告C銀行株式会社(以下、被告銀行という。)は,世界的な金融グループである*******を構成するC銀行の日本法人。口座維持、管理にあたって手数料を必要とするなど国内の銀行にはない営業方式を採用している。被告K(以下、被告Kという。)は被告銀行心斎橋支店支店長。
2(1)原告は,平成21年7月9日、被告銀行心斎橋支店を訪れ、口座開設を申し出た。その際応対した被告銀行従業員Tはまず同行が一ヶ月の業務停止命令を当局から受けていて、投資信託などの積極的な勧誘業務はできない旨説明した。原告は投資信託などはする予定はないことを伝えた。それからのやりとりは以下のようなものであった。
(2)T「本行の口座は今まで作ったことはありますか。」
原告「ありません。」
T「今回どういう目的で口座を開設するのでしょうか。」
原告「国際化時代ですから海外で銀行を利用する場合などのためにです。」
T「本人確認書類は持っていますか。」
原告「健康保険証を持ってきました。」
T「もう一つ他行のキャッシュカードはありませんか。」
原告「あります。」(M銀行のカードを提示)
T「今回預金されるのでしょうか。」
原告「はい。口座維持手数料が不要になる額程度で預金する予定です。」
T「申込書に記入してください。パスポートと同じ氏名で記入してください。」
原告「勤務先も記入するのでしょうか。」
T「できるだけ記入してください。」
その場で原告が国籍の欄に記入すると、
T「外国人の場合は外国人登録証明書が必要です。それがない場合は口座開設はできません。」
「先ほど健康保険証でいいとおっしゃいましたが、私の場合はダメなんですか。」と原告は確認したが、再度口座開設はできないとの返答であったので原告はそのまま帰らざるを得なかった。     
3(1)平成21年9月17日、原告は,前回求められた外国人登録証明書を携え、再び被告銀行心斎橋支店を訪れ、口座開設手続きを執ろうとした。被告銀行では国内の他の銀行とは異なり、個別ブースで従業員と顧客が一対一に対面して手続きを行う方式をとっているが、その時最初に応対した被告銀行従業員Sは口座開設の目的を原告に尋ねた。それに対し、原告は国際化時代であり、海外旅行の折などに利用することなどを伝えた。しかし、Sは明確な理由を述べることもなく、口座の開設はできないと説明した。原告はその根拠が不明であったので、詳しい説明を求めたところ、取引規約集を持ち出してきて、その第1条が理由だと言った。ところが、原告が同規約集にある預金口座取引一般規約第1条(甲第1号証)を読んでみても、そこには口座開設の目的といった文字は見当たらず、Sに対し、その旨伝えると、Sは上司の判断を仰ぐといって、被告銀行従業員Nとともに戻ってきた。
(2)被告銀行従業員Nも同じようにあいまいなことしか述べなかったので、原告がさらに説明を求めたところ、今度は被告銀行心斎橋支店支店長である被告Kがやってきて、再び、口座開設の目的を根掘り葉掘り原告に尋ねた。原告は、なぜそのように聞かれるのかよくわからなかったが、海外旅行の際などに利用する利便性や国内の他の被告銀行の支店も買い物などの機会に利用することを説明した。
(3)ところが、そのようなやりとりがあった後に、なぜか、結論として、被告銀行支店長である被告Kは「口座開設をお断りします。」と明言した。原告は被告銀行の求めどおりに外国人登録証明書を持参し、わざわざ出直してきているだけに、理由を正さないわけにはいかず、その根拠を求めると、「根拠は総合的判断です。」という。具体的理由を尋ねると、「すべてを含めた総合的判断です。」というだけで具体的なことは何も説明しようとしなかった。原告は被告銀行に融資などを求めに来たわけではなく、ただ単に口座を開設しようと来ただけであったので、なぜ断られるのか事態がすぐにのみこめず、被告Kに質問しても、被告Kは「総合的判断です。」と何度も繰り返すのみであった。原告は前回7月9日に訪れた際の説明とまるで食い違っていることを指摘しても「口座開設することを総合的判断でお断りします。」(発言そのまま)と言うだけで、原告が「根拠を示してください。」と言っても「根拠は総合的判断です。」(発言そのまま)と同じ内容を繰り返した。
(4)原告は、夏休み前に本人確認法に定められた健康保険証を持参して、口座開設の手続きに入ったものの、被告銀行独自の本人確認の方式だといって外国人登録証明書の提示を求められたために、今回登録証明書を持参して改めて訪れたのであって、そのことを説明しても、被告Kはその日その時に話をした結果として総合的判断で結論を出したというのみであった。原告は前に訪れた事実を確認してくださいと申し出ても、「調べる手段はありません。」と答えるだけで、また、今回の口座開設を断る措置の根拠となる書面や文書を示してくださいといっても「書面はない。」との簡単な返答であった。そのようなやりとりがあって午後4時を過ぎた頃、被告Kは「これ以上お話しすることはありません。」といってその場を立ち去った。
4 原告の銀行口座開設を認めず、またその根拠を示さなかった被告Kの行為は法の下の平等を定めた憲法第14条に反し、社会経済活動において等しく保障された機会を不当に奪うものであり、また、原告の自ら主体的に生活を営む権利としての人格権を侵害する行為であるから、民法第709条に規定する不法行為が成立する。よって、原告が被った精神的苦痛その他の損害につき、精神的慰謝料として、金100万円並びにこれに対する不法行為の日である平成21年9月17日から支払い済みに至るまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金を被告k及び被告Kの業務上の行為につき使用者として責任を負うべき被告銀行に連帯して支払うことを求めるものである。
              証 拠 方 法
1 甲第1号証 ******取引規約集(一部)
2 甲第2号証 被告銀行口座開設の説明書
添 付 書 類 
1 甲号各証(写)   各1通
2 資格証明書      1通

平成21年 9月24日
               上記原告  梁  視 訓  印
大阪簡易裁判所  御中

平成21年(ワ)第18594号損害賠償請求事件
原告 梁  視 訓
被告 C銀行株式会社 外1名
第 1 準 備 書 面
                  平成22年 3月18日
大阪地方裁判所第16民事部3D係 御中
 原告   梁  視 訓   印
 1 大阪地裁移送後の最初の期日である平成22年2月2日の第2回口頭弁論について、調書の記載は審理の内容を把握するには十分とは言えないので以下のとおり補足する。
 同期日において初めに「従前の口頭弁論の結果陳述」等弁論の更新手続きについて裁判官が一通り述べた後、証拠甲第1号証から甲第4号証までの原本の確認作業に入り、原告は甲第3号証を除いて書証の原本を提出した。続いて、同期日提出の甲第4号証について、その立証趣旨を証拠説明書に基づいて原告が説明した。
 2 次に裁判官が大阪簡裁から本件が地裁に移送されたことについて、「移送の件は民事訴訟法第22条により簡裁にもどしたりすることはできない。」と説明し、原告は「移送の理由がいまだに明らかでない。昨年12月3日付けの「移送等に関する調書記載異議等の申立て」のとおりであり、移送が決まったからといってそれですむことではない。」と意見を述べた。
  裁判官は本件の請求の原因となった事実関係について審理に入ろうとしたが、原告は裁判所に述べたいことがあるといって話を切り出した。裁判官に制止されたが、「裁判所で主張できなくてどこで主張できるんですか。」と述べて話を続けた。
 3 原告はその前の週、ちょうど1週間前に被告銀行を再度訪れ、改めて口座開設を申し出たがやはりできなかったもののその日いずれも初めて口座開設のため訪れた他の銀行2行ではその場で普通預金口座の通帳もでき、しかも、被告のように口座維持手数料月額2100円を必要とすることもなかったことを述べ、本件訴え提起の原因となった被告の対応は、こまごまとした事実関係に言及するまでもなく、他の銀行との比較においてもやはり基本的に「おかしい」ことをできたばかりの他行の通帳を実際に示して特に被告に対して強調して述べた。 
4 次に原告は裁判所の訴訟指揮等に関して、
① 本裁判の内容が広く世間に知れ渡っている気配がある。民事訴訟法に基づく本来の手続きによらないで、事件の内容が外部にもれているようである。
② 諸事情から推察すると、裁判所自身が本件を(本来独立して取り扱うべきであるのに)無理矢理他の件と関連づけようとしているのではないかという疑念を持たざるを得ない。
との趣旨を述べ、それに対し、裁判官は「何のことかわかりませんが。」と応じた。
 5 原告は、判決が出たばかりの東京地裁の件(平成18年(ワ)第28197号求償金等請求事件平成20年(ワ)第5609号損害賠償請求反訴事件)などを挙げて、遠方での裁判所の長期にわたる訴訟を強いられて、生活がそっちのけに(おろそかに)なり、簡裁でなら(手続きが簡略化されているので)何とかやっていけるかとの思いもあったが、理由不明のまま地裁に移送されてしまい、今はこの間におろそかになってしまった多くの課題に取り組まなければならない生活の事情があるので、期日においては書面によらなくても口頭で訴えを取り下げることができることを取り決めた民事訴訟法第261条第3項により本訴えを取り下げた。
  裁判官は同条第2項により相手方の同意がなければ、取り下げの効力が生じないことを述べ、被告にどうしますかと尋ねたところ、被告は「検討します。」と答えた。
 最後に裁判官は「次回期日は追って指定します。」として同日の審理を終えた。
6 原告は簡易裁判所で録音などの手段による口頭弁論の記録の充実を申し出たがそれが却下され、後に調書記載について異議の申立てをしなければならなかった。事件を正確に記録すること自体の持つ重要性に言及するまでもなく、そのような点も含めて、原告は裁判所の諸手続きに期待したものが見出せず、またいろんな面において切迫した生活の事情もあり、本訴えを取り下げざるを得なかったのであるが、普通ならば被告の側もこれで一件落着と胸を撫で下ろすところ、あえて、平成22年2月9日付けで異議申立書を提出して「訴えの取下げについて、異議があります。」とした理由は未だ明らかにされていない。本件は普通では考えられないことが重なって異例ずくめの裁判の進行状況であるので、何かあるごとに不慣れではあっても事情の説明に努めてきた原告としてはまず被告に取り下げ不同意の理由やその意図するところなどを明確にすることを求めたい。同時に、裁判所と言えども、市民に対してサービスを提供する機関であることに変わりはないので、裁判所にも、かねてより申し入れている移送の件およびその他の訴訟指揮について具体的にその理由、事情などを明らかにすることを求めたい。
7 本件のこれまでの反省を踏まえ、記録の充実を図り、またそのために要する負担を軽くするためにも、民事訴訟規則第76条に基づく、口頭弁論における陳述の録音装置を用いての録取を改めて裁判所に申し出ておきたい。

平成21年(ワ)第18594号損害賠償請求事件
原告 梁  視 訓
被告 C銀行株式会社 外1名
第 2 準 備 書 面
                  平成22年 5月 6日
大阪地方裁判所第16民事部3D係 御中
 原告   梁  視 訓   印
 1 平成22年3月23日の第3回口頭弁論について、調書の記載は必ずしも充分とは言えないので以下のとおり補足しておきたい。
 原告が第1準備書面で求めた、民事訴訟規則第76条に基づく、口頭弁論における陳述の録音装置を用いての録取について裁判官は必要なしとした。
  同書面での被告への取下げ不同意についての求釈明について、被告代理人はその場で終局的解決を図るためと簡単に説明したが、訴訟に要する労力、時間、費用等を考えれば、利潤を追求するはずの企業の行動として合理的に理解できない面もあるので、具体的に異議申立ての目的なり意図をあきらかにするよう原告は求めた。
 裁判官はそれにつき、その場でとりまとめようとしたが、原告は民事訴訟法に決められたとおり、書面で具体的な理由を書いて出してくださいと要請した。
  原告は簡裁から地裁への移送の件にも釈然としないものが残っていたので、裁判所と言えども市民の税金で成り立っているのであるから、納税者である当事者に裁判所が職権でとった移送などの措置について充分に説明してもらいたい旨改めて強調した。 
  このようなやりとりをまとめて裁判官は被告に求釈明への回答を求め、原告に対しては答弁書に対する反論(再反論)を求めたが、原告は取り下げに異議を申し立てた被告の具体的理由をまって対応を検討すると述べた。
  次回期日についての協議に入り、被告答弁書に電話会議を希望する記載があったので、原告が被告代理人に尋ねたところ被告代理人は裁判所に出頭すると応答した。
  最後に原告は裁判所書記官に対しても、調書に法廷でのやり取りを正確に記録として留めるように申し出た。
 2 被告答弁書第2被告らの主張についての認否その他
 (1) 平成21年9月17日に原告が被告銀行を訪れた際に原告がつけていたマスクは空気汚染対策や感染症予防のための健康上の理由からつけていたマスクであり、何ら特別なものではないが銀行入り口で取り外している。
  原告が銀行担当者に大声かつ命令口調で怒鳴りつけたりしたなどと記されているが、表現が誇張されており事実とは言えない。
  被告銀行が口座開設の目的にこだわり、それについて原告と被告銀行従業員との間でしばらくのやりとりがあったが、その時の事実関係は訴状3(1)(2)
 で述べたとおりである。なお、原告の発言として括弧内に書かれた内容は、消費者としての権利の主張として述べたものであり、括弧内のように命令口調でもなく、また「行内の秩序を害し、またその業務にも支障を生ぜしめ」るような性質のものでもなかった。
 (2) 被告らの主張の最後の段落(被告答弁書5ページ)において、被告らは「被告銀行としては、以上の経緯を踏まえ、やむを得ず原告の口座開設をお断りしたのである。」「上記のような経緯から口座開設を拒絶した」と繰り返し主張する。しかし、たとえば、預金口座取引一般規約(甲第1号証)第1条に被告銀行従業員が説明する通りの口座開設の目的についての記述がないなど(訴状3(1))原告に対する当初からのちぐはぐな応対ぶりからして、経緯を踏まえた上での結果としての口座開設拒否ではなく、最初から口座開設を拒否しようとしていたことは明らかであり、その口実として、以上のような理由にもならない理由を取り繕ったものと思われる。
(3) なお、当初被告従業員が口座開設拒否の根拠とした預金口座取引一般規約(甲第1号証)第1条は口座開設時などの本人確認についての規定であるが、原告が平成21年7月9日に「犯罪による収益の移転防止に関する法律」で定めるとおりの健康保険証等を持参しても口座開設を認めなかったため、被告銀行が独自に必要だとした外国人登録証明書を携え、平成21年9月17日に出直して訪れたのであり、同規約第1条の本人確認について問題となるようなところは全くなかった。
 (4) 口座開設の目的についての度重なる質問について被告らは「そもそも口座開設の目的を尋ねることについては、被告銀行の口座開設申込書(乙第1号証)にも目的の記載項目があるところであり、何ら特別な応対ではない。」(答弁書4ページ7行目以下)と主張する。被告銀行口座開設申込書兼契約書(乙第1号証、甲第5号証)裏面には確かに「お客様がC銀行に口座を開設した主な目的をお聞かせください。該当するものに☑をおつけください。(複数回答可)」とのアンケート欄があるが、それはあくまで同アンケート欄冒頭にはっきりと記されているように「お客様、一人ひとりにあわせたサービスや商品の情報をご提供するために、下記の質問にお答えください。」という目的のためであり、それに対する回答によって口座開設を拒否するような類の質問やアンケートではない。同申込書兼契約書(甲第5号証)の氏名住所等を記入する部分は3枚複写になっていて、3枚目の「お客様控」が契約締結時交付書面として、顧客の手元に残せるようになっているのに対し、口座開設目的を尋ねるアンケート部分は複写するようにはなっておらず、顧客の控えもない。申込書兼契約書の本文「私は、C銀行個人情報保護宣言を確認し、・・・本書面記載内容が真実に相違ないことを確認し、ここに署名または捺印します。」にも口座開設の目的についての記述はなく、同アンケートが申し込みや契約に必要不可欠なものではなく、被告銀行の業務に便宜を提供する参考資料程度のものに過ぎないことは同申込書兼契約書の構成からも容易に判断できることである。
  被告銀行取引規約集を見ても、預金口座取引一般規約には利用目的についての取り決めはなく、マルチマネー口座取引規約第3条に別途被告銀行所定の契約の手続きが必要な当座貸越≺マルチマネー・クレジット≻取引の利用にあたって、「当行は、その利用目的、借入その他の同種取引の経験の有無、財産の状況等の申告を求めることができるものとします。」とあるだけであり、事前の審査があるとされる被告銀行カードローンの取引規約やカードローン取引にかかる保証委託規約にも利用目的についての規定は見当たらない。その他取引規約集全体を通して目的の文字をくまなく探しても、海外送金の振込規定3(2)①に「外国送金依頼書に、送金目的その他所定の事項を記入して下さい。」とある程度である。被告従業員が原告に対し、執拗に口座開設目的を尋ね、それへの回答その他の理由から原告の口座開設を拒否したことは明らかに行き過ぎた行為であったと言わなければならない。
 3 原告は第2回期日の1週間前の平成22年1月26日に被告銀行を再度訪れ、改めて口座開設を申し出たがやはりできなかったものの、その日いずれも初めて訪れた他の銀行2行では、被告銀行のように口座維持手数料月額2100円を必要とすることもなく、その場で普通預金の口座が開設できた(甲第6号証)。原告が今まで経験した多くの銀行においても同様に口座開設自体に支障が生じたことは一度もない。そのような銀行と消費者の取引のあり方がひとつの社会常識となっている中で、被告らがとった原告に対する対処方法は通常の感覚としてあり得ないものであり、原告を必要以上に困らせ、円滑な社会経済活動を妨げるなど、原告の人格権を侵害し、社会生活上の損害を与えるものであったことは誰の目にも明らかである。
               証 拠 方 法
1 甲第5号証 被告銀行口座開設申込書兼契約書
2 甲第6号証 原告のS銀行およびN銀行普通預金通帳

平成21年(ワ)第18594号損害賠償請求事件
原告 梁  視 訓
被告 C銀行株式会社 外1名
訴 え の 変 更 申 立 書
                  平成22年 7月24日
大阪地方裁判所第16民事部3D係 御中
 原告   梁  視 訓   印

上記事件について、原告は次の通り訴状記載の請求の趣旨を変更する。
請 求 の 趣 旨
1 被告らは,原告に対し,連帯して、金1万円及びこれに対する平成21年9月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は,被告らの負担とする。
との判決及び仮執行の宣言を求める。

請 求 の 原 因
 原告は以下の通り請求の原因について原告の主張を補充する
1 原告第2準備書面に対する反論については、被告は準備書面(1)第2、
2において乙第2号証「主要行等向けの総合的な監督指針」などを引用し、金
融機関が口座開設にあたって口座の利用目的を確認することは重要であると主
張する。同号証の引用部分をよく読めば銀行の利用目的等の確認の目的はヤミ
金融業者による違法な取り立てや架空請求書を送りつけての振込請求など預金
口座の不正利用を防止するためであり、原告に不正利用の疑いがあるかないか
は他の顧客に比べても充分過ぎる程の事前の質問と確認によって明らかにされ
ているはずである。
 平成22年6月10日の期日に提出された乙第4号証の内部規定については
書証として提出された文書の作成者や文書の性格が明らかでなく、また、その
ほとんどの部分が覆い隠されているため準備書面(1)第2、2(3)に引用
されている部分の位置づけ、文脈が不明で証拠として意味のあるものとは言え
ない。
 結局のところ、口座開設の目的についての問題点は原告がそれについて詳し
い程に説明しているに対し、それに必要以上に固執し、最終的に「総合的判断」
と称して口座開設を拒否したことにある。   
 2 原告の主張を付け加えるならば、銀行を利用する目的はもともとさまざまであり、一つの目的に限定するようなものでもなく、また、口座開設した後に目的も変化しうるものである。たとえば、公共料金支払いのため口座開設した後に、利殖を目的として定期預金するとか、被告銀行の場合で言えば、国内支店で利用する目的で口座開設した後に、海外の支店で利用することもあるであろうし、円高円安の為替の利益を享受しようとすることもあるであろう。むしろ、銀行の側が顧客に対し、口座開設をきっかけにして金融商品の販売などの取引を活発にさせようと広告宣伝費用を出してまで積極的に口座開設を呼びかけるのが普通であり、銀行の利用目的にこだわること自体あまり意味があるとは思えない。
  原告が7月に被告銀行を訪れた際にもそれが問題になることはなく、本人確認書類として健康保険証にかわって外国人登録証明書を求められたのみである。それだからこそ、原告はわざわざ9月になって外国人登録証明書を持参して出直して訪れたのである。
  なお、被告ら答弁書第2、3において「原告は・・・口座開設の目的については回答しなかった。」と主張するが事実に反している。訴状に記載したとおりの説明をしている。第2、5においても「原告は被告川端から口座開設の目的を問われた際、それに回答することなく・・・」と言う部分も事実に反している。9月に訪れた際、口座開設目的を述べようとしなかったと言う点も全く事実に反している。原告は具体的に被告銀行の他の支店の場所を挙げて口座開設の目的について説明した。
  乙第2号証と乙第3号証については、金融庁の監督指針があること自体、私企業にはない公共性が求められている証であり、預金者保護が重点的に謳われているように、納税者である市民の口座開設の権利を含めた保護のために、さまざまな政策が執られているのである。契約自由の原則だと言って、私企業と同様に利潤を追求していいというものではない。金融危機に際しては銀行の危機的状況を救うため税金が投入されるがそれを負担した納税者の保護を図ることはごく自然なことであり、納税者である原告の口座開設の権利についても全く同じことが言える。
  平成21年7月9日には外国人登録証明書が要ると言い、それを持参して訪れた同年9月17日には今度は口座開設の目的うんぬんという理由を持ち出して銀行の利用を拒否した。このように銀行口座開設を拒否する理由があいまいで首尾一貫性がないこと自体、何とか口実を設けて、取引を拒絶しようとする姿勢の表れであり、また、原告が新たに口座開設を申請した場合に今もって認めるかどうか明らかにしようとしないことも被告らの口座開設を拒否する根拠に合理性と一貫性が欠けている証拠である。
  ちなみに、原告は銀行口座の開設の是非が争われた裁判の事例を調べてみたが、見つけることができた事例はどれも複雑な事情が絡んだ事業用の口座の開設についてであり、一般顧客の生活のための口座開設とは性質が異なっており、今回のようなケースが裁判になったという話は原告が調べた限りでは見当たらなかった。
 3 ところで、原告が7月に被告銀行を訪れた際に被告らが在留資格確認のためと言って外国人登録証明書の提示を求め、その提示がなかったことにより、口座開設が不可とされたことについても、見逃すことができない問題点が含まれているので、その点を明らかにするため、まず歴史的事情として、原告の体験から外国人登録と出入国管理の一つの断面をまとめてみた。
  原告が1980年代に海外に旅行した際には、旅券の役割を果たす証明書として、再入国許可書を携えていたが、そこには在留資格として4—1—14とだけ記されている。1990年代に海外に出かけた際所持していた再入国許可書の在留資格欄には「特別永住者(PERMANENT)」と記されている。2000年代に入っては正式な旅券を携えていたが、その時にも「再入国許可」を必要とした。整理すると、
  ① まず、在留資格などの生活の根幹に関わる重要な事項が非常にわかりにくいということがある。長らく原告やその家族の在留資格は126—26とか4−1−16−2とか4—1—14とかの記号で呼ばれていた。その意味するところについて当事者や専門家でさえよく理解できないところがあった。当事者がその置かれた法的地位についてよく周知された上で充分に理解し、異議申立てを含め権利を適切に行使できる状態にあることも権利権益の重要な内容であり、法的地位や権利が外国人を含む市民ひとりひとりのものとして充分に生かしきることができるような状況になっていない。
  ② 次に在留資格が細分化されているということがある。一般的にも家族の中で在留資格などが異なると言うことがまれでない。典型的な例としては、126—26と4−1−16−2のように1952年4月28日の前に生まれたか、後の生まれたかによってさしたる理由もなく在留資格が区別されたようなことがある。言うならば、家族の中にも人為的な境界線が引かれたということである。
  ③ 上に記したように在留資格の政策制度がめまぐるしく変化している。その最も大きな原因は人権の尊重と言う点で制度の最初からあまりにも国際的な標準からかけ離れていたからであるが、当事者関係者の長きにわたる労苦と尽力があり、政治や国際情勢にも翻弄されて一度や二度ではない手直しが加えられている。それでも今なお、しかるべき権利と地位が保障されるまでには至っていないが、人生の進路に直接かかわるものであるだけに、制度がたびたびかわること自体、安定した生活の妨げとなる要因として作用した。 
  ④ たとえば、海外旅行などの際に必要な再入国許可制度を取り上げてみても、他のたとえば経済や科学技術の分野においては先進諸国並みに進んでいても、この分野においては立ち後れていることがわかる。一部例外を除いてすべての外国人は海外に出かける場合、再入国の許可がなければならないが、その許可については今でも「出入国管理及び難民認定法」第26条に「法務大臣は・・・再入国の許可を与えることができる。」とあるだけであるから、法務大臣の裁量次第ということになる。裁判所までもが「我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものでない。」(最高裁判所平成4年11月16日判決平成元年(行ツ)第2号再入国不許可処分取消等請求事件)(甲第9号証)との判断を示している。難民条約により認定された難民が再入国許可を必要とせず、難民旅行証明書により海外への旅行の自由が認められているのとは対照的である。(「出入国管理及び難民認定法」第61条の2の12第4項)
  以上列挙したような人権上の問題が今なお根強く残る在留資格等の制度であるのに、これを絶対視して、被告銀行が外国人にのみ在留資格確認のためとして、本人確認法を引き継いだ「犯罪による収益の移転防止に関する法律」で定められた方法にさらに上乗せして本人確認手段として外国人登録証明書の提示を求めることは人権感覚の欠如以外の何ものでもない。特に外国人登録証明書については指紋押捺や常時携帯の義務が課せられたことにより、多くの事件の原因となり、当事者の代価を支払った努力の歴史があったのであり、それ以外に本人確認の方法を認めないことはあまりにも無神経と言わざるを得ない。
  この点については特に被告銀行は外国銀行であり、少なくないはずの外国籍の被告銀行関係者にもこの制度が同じように適用されているから、自身に降りかかる問題として制度の矛盾に少しは理解があってもよさそうであるのに、その気配が皆目感じられない。
  原告が平成21年7月に最初に被告銀行を訪れた際、このように人権感覚が欠如し、外国人が置かれた歴史的経緯を無視した口座開設不可の理由であったが、その不当な求めに対し、原告は異議を申し立てたものの、2ヶ月後に求めに従って、外国人登録証明書を携え、再び被告銀行を訪れたのであって、それでも、被告らは今度は口座開設の目的どうのこうのという別の理由を持ち出して口座開設を拒否したのである。(なお、証拠資料中裁判記録など実名の記載された資料の取扱いには裁判所および被告らともにくれぐれも注意されたい。)
               証 拠 方 法
 1 甲第7号証 横浜地裁昭和45年(ワ)第2118号解雇無効確認等請求        事件同49年6月19日判決についての判例特報の解説など
 2 甲第8号証 大阪地裁平成元年(ワ)第3122号賃借権確認等請求事件        平成5年6月18日判決についての判例時報の解説など
 3 甲第9号証 最高裁判所平成4年11月16日判決平成元年(行ツ)第2        号再入国不許可処分取消等請求事件についての雑誌ジュリス        トの講評
  

平成21年(ワ)第18594号損害賠償請求事件
原告 梁  視 訓
被告 C銀行株式会社 外1名
第 3 準 備 書 面
                  平成22年 9月29日
大阪地方裁判所第16民事部3D係 御中
 原告   梁  視 訓   印
  原告は被告らの平成22年9月30日付け準備書面(3)を受けて、以下の通り主張を補充する。
 1 準備書面(3)の被告らの主張には、原告の口座開設拒否の理由として述べている事実関係があまりにも唐突で現実とかけ離れているところが見受けられる。原告は通称名はここ何十年も使ったことがなく、もちろん、平成21年7月9日に被告銀行心斎橋支店において口座開設申込書に記入することもしていない。したがって、準備書面(3)第1「平成21年7月9日の事実関係の補充」、第2「被告の本人確認方法が適法であったことについて」の内の2(1)2(2)における、原告が通称名を使用したことを前提とする被告らの口座開設拒否についての主張は一つ一つ認否反論するまでもなく、根拠がない。
 2 また、同書面第2、1における主張については、犯罪収益移転防止法及び同法施行規則の該当する条文は次の通りであり、自然人である原告について運転免許証や国民健康保険証、外国人登録証明書等のいずれかによって、顧客の氏名、住居及び生年月日をいう本人特定事項の確認を行なわなければならないとするものであるので、原告は国民健康保険証を持参、提示したのであるから健康保険証により充分に同法の要請は満たされている。
  犯罪収益移転防止法第四条(本人確認義務等) 
  特定事業者は、顧客との間で、次の表の上欄に掲げる特定事業者の区分に応じそれぞれ同表の中欄に定める業務のうち同表の下欄に定める取引(以下「特定取引」という。)を行うに際しては、運転免許証の提示を受ける方法その他の主務省令で定める方法により、当該顧客等について、本人特定事項(当該顧客等が自然人である場合にあっては氏名、住居及び生年月日をいい、・・・)の確認(以下「本人確認」という。)を行わなければならない。
  同法施行規則第三条(本人確認方法)
  犯罪による収益の移転防止に関する法律(以下「法」という。)第四条第一項に規定する主務省令で定める方法は、次の各号に掲げる顧客等又は代表者等の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める方法とする。
 一  自然人である顧客等又は代表者等 次に掲げる方法のいずれか
 イ 当該顧客等又は代表者等から本人確認書類(次条に規定する書類をいう。以下同じ。)のうち同条第一号又は第四号に定めるものの提示を受ける方法
  同法施行規則第四条(本人確認書類) 
  前条第一項に規定する方法において、特定事業者が提示又は送付を受ける書類は、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める書類のいずれかとする。
 一  自然人 次に掲げる書類のいずれか
 イ ・・・印鑑登録証明書
 ロ 印鑑登録証明書(イに掲げるものを除く。)、外国人登録原票の写し、・・・  等々。
 ハ 国民健康保険、・・・等々の被保険者証、・・・等々。
 ホ ・・・運転免許証、外国人登録証明書、・・・等々。
 3 被告銀行の顧客重視と経済合理性の徹底の企業方針は一貫していて、たとえば口座開設の方法にも顧客の利便性への配慮がうかがえ、支店に直接出向かなくても口座開設できるテレホンバンキングの方式を国内で初めて導入するなどしている。確かに午前9時から午後3時までの開店時間では普通のサラリーマンが銀行へ行くのはむずかしいから被告銀行が導入した口座開設方法により一般の個人顧客の利便性ははるかに向上した。今ではテレホンバンキングの方式以外にもインターネットを使ったり、郵送による方法でさらに便利に口座開設ができるようになっていて、本人の確認方法も本人確認書類を郵送、ファックス、インターネットなどで送るだけでいいことになっている。原告は直接何度も支店に足を運んで個別面談方式による手続きをとったのであるから、そのように本人が直接支店において手続きをとらなくて済むテレホンバンキングなどの方法と比較しても被告銀行にとって確実な本人確認ができたはずであり、不正利用の疑いがないこともわかったはずである。そのような普通一般にとられている方式と比較しても、3度も本人が足を運んでも口座開設を認めなかった被告銀行の原告への対応には不可解な点が数多く残されている。(テレホンバンキングについては甲第11号証を参照のこと。)
4 本件を取り巻く事情を考慮すれば、その是非はともかくとして、原告が外国籍であることは理由のすべてではないにしても口座開設を拒否した一つの理由、一つの要素であるかもしれないが、国内だけでも被告銀行が属するCグループにおいては44ヵ国の出身の社員が働いているというし、被告銀行の親会社であるCグループ全体では世界160以上の国と地域に約2億の顧客口座を有するというから、単なる一顧客の国籍のみにこだわる必要性もなく、それだけが口座開設を認めない根拠というわけではないであろう。
 5 被告銀行が本訴訟に取り組む姿勢全般を見ても、顧客を重視する被告銀行自らが掲げる企業のモットーにも反していて、株主や顧客、市場しいては社会の動向すべてを意識しないわけにはいかないグローバルな金融機関にふさわしい企業の行動とは思えない。特に公共性のある金融機関には社会に対し、適切に情報を開示すべき責任があるのであるから、未だに真摯な説明がなされているとは言えない口座開設拒否の理由について社会的要請に見合った説明責任を果たすことを求めたい。
 
               証 拠 方 法
 1 甲第10号証 犯罪収益移転防止法第四条(本人確認義務等)同法施行規         則第三条(本人確認方法)同法施行規則第四条(本人確認         書類)(「逐条解説犯罪収益移転防止法」からの抜粋)
2 甲第11号証 「なぜ、今******なのか」オーエス出版発行26ペ         ージから29ページ「******の徹底した顧客重視の         サービスとは」

平成21年(ワ)第18594号損害賠償請求事件
原告 梁  視 訓
被告 C銀行株式会社 外1名
第 4 準 備 書 面
                  平成23年 1月23日
大阪地方裁判所第16民事部3D係 御中
 原告   梁  視 訓   印
  原告は被告らの準備書面(5)および乙第8号証陳述書を受けて、以下の通り主張を補充する。
 1 被告らは平成22年12月16日付け準備書面⑸において、事実関係を訂正し、その第2において、新たに「被告銀行は、接客の慣行として、外国人には、外国人登録証明書の提示を求めている。・・・外国人登録証明書は、外国人登録法により、携帯義務が定められている。・・・」という口座開設に当たって外国人登録証明書を特に要求した理由を付け加えている。外登証の常時携帯義務は国会での質疑の抄録である甲第15号証を参照するまでもなく、指紋押捺制度と並んで、人権上の多くの不条理を指摘されてきた制度である。
  外登証の常時携帯義務など外国人登録法の規制を受ける点では原告とグループ全体で44ヵ国の出身者がいるという被告銀行従業員、関係者とは同じ立場であり、被告銀行で働く多くの関係者自身の権利と利益に反するような人権上問題のある措置を安易に是認するような手続きが「接客の慣行」となっているという説明はにわかには信じがたい。
  また、外国人にのみ特別な措置をとることはグローバルな金融機関として顧客の利便性と経済合理性を重視する被告銀行の方針、モットーにも反しているし、自由な経済活動を妨げる一つの制約であり、障壁でもある。人権問題は世界中のどこにおいても感情的な軋轢を生じさせる問題であり、本件のように顧客にも好印象を持たれない、非常な反感を買うおそれのある事象であるから、被告銀行にとっては、マイナス材料ばかりの措置であり、それが「接客の慣行」になっているとの説明は全く不自然であり、信憑性に欠けると言わざるを得ない。
  甲第15号証は「在日外国人に大きな不便と苦痛を与えている」「外登証の常時携帯義務」についての1987年の「衆議院法務委員会議録(抄)」(「外登証常時携帯制度と人権侵害」に資料Ⅶとして収載)であり、このテーマについての一つの資料に過ぎないが、それから20年以上経過した今日において、その間に、もう一つの外国人登録行政の問題点であった指紋押捺制度は廃止され、国際化の波もあり在日外国人に適用される法制度はいくらか改められたが、その流れに逆行するように、最もふさわしくない被告銀行から「外登証の常時携帯義務」の言葉が持ち出されるとは思いもよらないことである。
  以上の点からしても、事実関係が訂正された被告準備書面⑸(平成22年12月16日付け)および乙第8号証のTによる陳述書のいずれについても被告の説明はとても事実として受け入れることができるようなものではない。
 2 また、被告銀行が原告の口座開設を拒否した理由の内、口座開設目的に関することであるが、原告が最初に被告銀行を訪れた際に応対した被告銀行従業員Tの陳述書(乙第7号証)によると、その3において、「口座を開設する手続きに進みました。」とし、口座開設目的についての原告とのやりとりがあった後に本人確認の手続きに移っている。この点においては原告が訴状で述べたとおりである。もし仮に原告の口座開設目的において何らかの問題点があったならば、さらに深く質問したり、確認したりするであろうから、時間もかかるであろうし、そこで手続きが一旦留まるはずである。しかし、実際は次の事項である本人確認のテーマにすんなり移っていて、そのことからしても,原告が述べた口座開設の目的について、問題があったわけではないことがわかる。
  被告らは平成22年11月11日付け準備書面⑷第2において、口座開設を拒否した理由として、口座開設の目的を明確に述べなかったからであるとしているが、原告は口座開設目的について説明し、それを被告銀行従業員Tも了解したからこそ、次の確認事項に手続きを進めたのである。従って、口座開設目的を述べなかったから、口座開設を拒否したとする被告らの説明はこれも信じがたく事実に沿ったものとは思えない。
 3 求釈明の申立て
  以上のように被告銀行が原告口座の開設を拒否した理由として挙げた内容は、陳述書と主張が訂正された後も、いずれもおよそ事実とはかけ離れたものばかりであるので、改めて、口座開設拒否の理由を事実に基づいて明らかにすることを求める。
             証 拠 方 法
 1 甲第15号証 「衆議院法務委員会議録(抄)」「外登証常時携帯制度と         人権侵害」に資料Ⅶとして収載)

平成21年(ワ)第18594号損害賠償請求事件
原告 梁  視 訓
被告 C銀行株式会社 外1名
第 5 準 備 書 面
                          平成23年 6月 1日
大阪地方裁判所第16民事部3D係 御中
                    原告   梁  視 訓   印
 本年4月21日に実施された証人当事者尋問を踏まえて、原告は以下のとおり主張を補充する。
1 被告Kや証人Tの尋問により、被告銀行が原告の口座開設の申し出を拒絶した根拠が恣意的で一貫性に欠けることが裏付けられた。T証人は原告に特に求めた外国人登録証明書について、「外国籍の場合で外国人登録証明書を持っていなかったために口座開設できなかったという例」は「私の経験ではありません。」(T証人調書7ページ9行目から12行目)と言い、市町村が発行する「(登録原票)記載事項証明書」とパスポートで口座を作ったことがあると言って、外国人登録証が必ずしも必須のものではないことを認めている(同証人調書8ページ16行目から9ページ12行目まで)。また、被告Kは原告の口座開設を拒否した理由であった口座開設の目的について、それを理由に口座開設を断った他の事例を挙げることができず、「最近の事例ではほとんどございません。」(被告K本人調書11ページ16行目)と答えざるを得なかった。その他、被告側が提出した乙第4号証についても、あいまいな説明に終始し、断片的にごく一部のみ開示された書証であるサービスマニュアルの全体を示して下さいと言う原告の求めにも応じられないとし、説明と立証の責任を果たすことにも消極的であった(被告K本人調書19ページ20行目)。
 以上のように、被告銀行の措置は合理的な理由と相当性を欠き、明らかに行き過ぎたものであって、原告に対し、本来ならば避けられたはずの少なくない損害を被らせたと言える。
2 ここで被告Kに対する原告の最後の尋問事項(被告K本人調書20ページ21ページ目)について一言触れておきたい.
 甲第12号証の記載についてT証人の尋問において確認したように、被告銀行が甲第12号証(『反社会的勢力と不当要求の根絶への挑戦と課題』)や甲第13号証(『金融界における反社会的勢力排除の理論と実務』)の文献で言うところの「反社会的勢力」(一定の手続きを経た上で対象が定められているわけではないので正確な表現とは言いがたい。)への対策に関連して2度にわたり当局から行政処分を受けていること、また、すでに通知されていた融資取引についてのものに加えて、普通預金取引等についての暴排条項の参考例が全国銀行協会から公表された時期(平成21年9月24日)が原告が被告銀行により口座開設を拒否された日(平成21年9月17日)に極めて近かったこと、それに、口座開設拒否の理由として被告銀行従業員からあった説明の仕方が上記甲号証の文献にある対応方法と同様で見分けがつかず、一消費者の立場として、一方的な誤った認識による措置、対応であった可能性が否定できなかったことから、原告は当事者尋問においてこの点について是非とも確かめておく必要があった。
 甲第12,13号証にあるような「反社会的勢力」に対する銀行などの金融機関の対処方法は何よりも基本的に日本語には公正と翻訳されるフェアー(fair)な方法ではない上に、証人等尋問の際に原告が述べたように、もし誤った情報などにより間違って取引を拒絶する対象と見なしてしまい、上記文献にあるようにその理由を具体的に説明することもなくただ抽象的に、総合的判断、総合的理由によるなどと言って一顧客、一消費者の普通預金などの取引を拒否した場合に、当該顧客にとっては取引ができない理由がわからず、その誤った措置を被ったことによる不利益を回復する道がなく、そのままの状態が放置されることになる。しかも、一行だけでなく、他の銀行も追随して同様の措置をとれば、一消費者が理由を明かされることもなく金融界から村八分にされてしまうことにもなりかねない。そのような場合を想定していけば、上記甲号証にあるような対応方法は当局が意図した対象ばかりでなく、その他の一般の消費者の権利と利益をも危うくする危険性をはらんでおり、社会全体に及ぼす負の波及効果は想像以上に大きいのではないか。
 一般的にどのような場合でも言えることであるが、ある措置について、少なくとも利害を有する当事者にその根拠が明らかにされた上で、当事者関係者が検証したり、異議申立てをする機会が保障されない社会的な仕組みや方法は人権上の配慮に欠け、今の時代にかなったものとは言えない。
 原告の場合も結局、裁判所での証拠調べである証人等の尋問に至って初めて、口座開設ができないことの理由がこれに関連するものであったか否かを問いただすことができたのであり、ここに至るまでにすでに被った時間的な損失を含めた不利益は計り知れない。

2011年5月18日水曜日

‘The modern press itself is a new phenomenon. Its typical unit is the great agency of mass communication. These agencies can facilitate thought and discussion. They can stifle it. They can advance the progress of civilization or they can thwart it. They can debase and vulgarize mankind. They can endanger the peace of the world; they can do so accidentally, in a fit of absence of mind. They can play up or down the news and its significance, foster and feed emotions, create complacent fictions and blind spots, misuse the great words, and uphold empty slogans.’
“A Free and Responsible Press: Report of the Commission on Freedom of the Press”

‘An important aspect of public expectations from the media concerns the related issues of trust ant credibility. Three main factors are involved. One is that of objectivity; there has to be confidence that information is accurate, complete, and reliable. Secondly, there is the matter of reliability; the public wants unbiased information and analysis that does not have a hidden agenda or serve special interests. Thirdly, the public ( as audience ) appreciates it when they believe that journalists are looking out for and representing their interests (those of the public). This kind of trust is most likely to be generated by local news media or sources that are very familiar. The general issue of trust is a large one and should be of concern for all media, with a relationship to accountability (of media to their audience). By various accounts the media has been losing trust and once lost it is hard to regain, just as it has proved difficult for new media (e.g. on-line news) to gain trust.’
“Media Accountability and Freedom of Publication”