2011年1月17日月曜日

ある訴訟の記録2答弁書




ある訴訟の記録1訴状

訴    状

      〒577-****

      大阪府東大阪市******(送達場所)

 原 告     梁  視 訓 

TEL 06(6729)***

FAX 06(6729)***

      被告 ノーベル財団(The Nobel Foundation

      上記代表者理事長マーカス・ストーク(Marcus Storch)

      被告住所  Sturegatan 14(ストゥレガタン14)

           Box 5232

           SE-102 45 Stockholm(ストックホルム)

           Sweden(スウェーデン)

損害賠償請求等の訴

訴訟物の価額  金 5億160万円也

貼用印紙額   金 152万6000円也

請 求 の 趣 旨

1 被告は、原告に対し、金5億円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。

2 被告は、原告に対し、被告が保有する原告に関わるすべての情報を開示せよ。

3 訴訟費用は,被告の負担とする。

との判決及び仮執行の宣言を求める。

請 求 の 原 因

1 原告は,日本で生まれ育った外国籍の医師。大学在学中から生命科学に関心があり、独自な立場で私的な研究を続けてきた。それらの成果を科学哲学を中心とする学際的な日本の学会である科学基礎論学会で発表したりした。その主な内容は自然現象としては特異な現象である生命現象のメカニズムを明らかにすることであり、3つの柱から成り立っていた。一つ目は生命現象は物理化学の用語で言えば自己触媒反応であり、その定義や規範として指数曲線が欠かすことができないこと。(1981年から1985年まで同学会で発表)二つ目は生命現象に関わる諸要素の関係や動きを代替性と補完性の概念で統一的に説明しようとしたこと。(1998年同学会で発表)三つ目は生命現象を特徴づける知的活動や生物個体の持つ潜在的可能性を探索し、試行するプロセスで説明しようと試みたことである。(1999年同学会で発表)

 被告は学術の各分野と平和賞部門を有する国際賞を運営する財団。被告自身は私的な機関であるが、受賞者選考過程や授賞式など全体を通して国家的事業の色彩を帯びている。

2 被告の違法行為

 上記学術活動に関連すると思われるが、被告が原告の同意を得ることなく、上記学会や原告が所属する大学の専門教室などで原告にかかわるセンシティブな内容を含む個人情報を収集し、蓄積したこと。原告の度重なる求め、働きかけにもかかわらず、そのように収集蓄積した原告の個人情報を原告自身に開示せず、原告の自らに関する事柄について、自ら決定することができる権利である自己決定権を侵害したこと。そのように本人の承諾を得ることなく収集した機微な内容を含む個人情報を確からしいと思わせるのに充分な方法で世間に広く流布したこと。(1999年の原告の学会発表の翌年2000年から3年連続して日本人が被告の賞を受賞したことや大阪地方裁判所平成18年(ワ)第4497号損害賠償等請求訴訟(以下、4497号訴訟という)で送達の手続きが進められていた2008年に被告の賞をそれまで考えられえられなかった程に複数の日本人が一度に受賞したことなどがこれにあたる。)以上の行為により、被告は原告のプライバシー権、自己情報コントロール権、自己決定権(人格的自律権)等の人格権を侵害し、原告に損害を与えた。

3 原告が被った被害について

 2000年から被告国際賞を3年連続して日本人が受賞した頃から一段と著しくなったが、原告はさまざまな生活領域においてそれまで経験したことがない程の困難に直面した。その具体的な事実関係については、それらの事件を取り扱った裁判の記録に整理されて収められているので、本訴訟においてもそれらの記録を必要に応じて提出することにしたい。それらを列挙すれば、長期にわたって続く職場での労働問題、次々と降り掛かる公害問題、賃貸住宅からの立ち退きを求められた事件、金融機関に訴えを起こされた事件、家族が所有する土地について遠方の裁判所に訴えを提起された事件などがある。原告は公害や雇用の問題で訴訟提起する必要に迫られ、弁護士に依頼しようとしたが、弁護士会で紹介された弁護士などいずれの場合もどうしても受任してもらえなかった。そのため原告は裁判をすることにさえ支障を来している。そのように特殊な事情が生まれたのも被告の一連の行為と無縁ではない。ここでは原告が被った被害のほんの一部であり、表面的な事象ではあるが、裁判所など公の機関で取り扱われた事件等を中心に説明することにしたい。

① 労働問題

 原告は医師として長年同一の医療機関に勤務してきたが、2003年春頃から他の従業員などから迷惑行為を受けるようになり職場での勤務に支障を来たしたことから、2004年(平成16年)には3月31日に大阪紛争調整委員会(大阪労働局)に対して個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づくあっせん手続き(事件番号大阪局−15−350号)をしなければならなかった。その数ヶ月後の6月には就業を打ち切られ、その解雇処分を巡って、その年の10月には日本弁護士連合会に人権救済の申立てをするに至った(2004年10月5日受付)。理由のない解雇により収入が途絶えた期間が3年近くに及んだものの、大阪地方裁判所に労働審判を提起することによってやっとの思いで職場に復帰した(大阪地方裁判所平成18年(労)第69号地位確認等請求労働審判事件)。しかし、使用者側の不当な行為は一向におさまらず、平成20年には今度は大阪弁護士会民事紛争処理センターに示談あっせんの申立てをしなければならない事態に陥った。(事件番号平成20年(示)第10号)原告の職場におけるたとえば労働条件の不利益変更などの問題は今も厳しさを増すばかりである。

② 公害問題

 原告住所の隣接地の工場設置を巡る紛争が1990年に発生したが、その問題の解決が円滑に進まず、やがて原告は次々と新たな公害被害に見舞われるようになった(騒音公害や低周波空気振動公害)。近隣の公害問題解決のため地道な努力を重ねてきた原告であったが2001年には市の条例に明確に違反する施設が近隣に設置されたりしたため、2005年に市を被告とする国家賠償請求訴訟(大阪地方裁判所平成17年(ワ)第365号損害賠償請求事件)を起こさなければならなかったし、2006年にも貸工場所有者に対する訴訟を提起しなければならなかった(同裁判所平成18年(ワ)第3562号損害賠償請求事件)。公害被害を回避するため、被告は借家を借りての避難生活を余儀なくされたがそこでも簡易裁判所に調停申立てしなければならないような紛争が数件生じている。

③ 借家からの立ち退き要求

 公害回避のため借りていた借家について、仲介業者や借家所有者との関係は極めて良好であったのが、2003年になって突然退去するように求められた。この紛争について、2004年に急いで仲介業者相手の訴えを提起せざるを得ず(大阪地方裁判所平成16年(ワ)2932号損害賠償請求事件)、また、家主からの建物明渡の請求訴訟に対処しなければならなかった(大阪地方裁判所平成16年(ワ)4443号建物明渡請求事件、大阪高等裁判所平成17年(ネ)第276号同控訴事件)。この件では裁判官忌避の申立てや最高裁への上告手続きもとられている。

④ その他、優遇金利が適用されるなど長年にわたって極めて良好な取引関係であったクレジットカード会社が、2006年12月にわざわざ遠方の裁判所に訴えを起こしたため、その頃不当な解雇のため収入が途絶え交通費さえ工面できなかった原告は、東京地裁への移送申立、東京高裁への即時抗告、最高裁への特別抗告などを強いられ、その後3年にわたって対応をせまられた(東京地方裁判所平成18年(ワ)第28197号求償金等請求事件、平成20年(ワ)第5609号損害賠償請求反訴事件)。同じ時期別の裁判所でも高齢の原告の家族が訴訟提起され、原告がその対応に追われた(津地方裁判所平成18年(ワ)第55号境界確定請求事件、平成19年(ワ)第306号通行権確認請求反訴事件)。

 これらの諸問題の訴訟手続きを含めた問題解決に困難を来したことにも、至る所で色濃く被告の行為の影響が及んでいる。

4 被告は2で述べたような原告のプライバシー権、自己情報コントロール権、自己決定権(人格的自律権)等の人格権を侵害する行為により、原告に回復不可能な程の損害を与えたのであるから民法第709条等に規定する不法行為が成立する。よって、原告が被った損害につき、金5億円並びにこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うことを求めるものである。なお、訴訟に要する費用の関係から、今回の請求も、原告が被った被害、損害の一部のみについてであり、被害全部についての請求ではないこと、また、本訴えの請求には原告の学術活動の著作権などは含まれないことを念のため付け加えておく。

5 原告が本状で述べたような著しい困難に直面していることは、被告は充分承知しているはずである。にもかかわらず、被告は長期にわたり消極的な姿勢に終始し、何ら有効な手だてを講じようとはしない。そこで、請求の趣旨第2項のとおり、原告の自己情報開示請求をすることによって、原告並びに関係者の被害防止などの対策に少しでも役立てようとするものである。この自己情報の開示請求は今日では自己決定権(人格的自律権)、現代的プライバシー権である自己情報コントロール権、情報アクセス権(知る権利)それぞれにおける一つの重要な要素として、国、地域を問わず認められている自己情報開示請求権に基づくものである。(これについては4497号訴訟の原告第1準備書面である甲第1号証を参照していただきたい。)

6 本件請求の趣旨第1項の損害賠償請求は渉外的人格権侵害事件として不法行為地に認められた国際裁判管轄に基づく請求であり、本件請求の趣旨第2項の情報開示請求は請求相互間に密接な関係がある場合に認められる訴えの客観的併合による請求である。

              

              証 拠 方 法

1 甲第1号証 大阪地方裁判所平成18年(ワ)第4497号損害賠償        等請求事件原告第1準備書面

添 付 書 類 

 甲第1号証(写)                  1通

2 被告の住所、代表者等を確認するための書類      

平成22年 3月30日

            上記原告  梁  視 訓  印

大阪地方裁判所  御中

2010年11月13日土曜日

2010年9月19日日曜日