即 時 抗 告 状
〒577-****
大阪府東大阪市**********
抗告人(異議申立人、調停申立人) 梁 視 訓
TEL 06(6729)****
FAX 06(6729)****
〒520−****
滋賀県************
調停事件相手方一般財団法人近畿健康管理センター
代表者代表理事 * * *
TEL 077(***)****
FAX 077(***)****
上記当事者間の大阪簡易裁判所平成25年(ノ)第381号未払い賃金等請求調停事件(本案調停事件)における大阪簡易裁判所平成25年(サ)第882号裁判所書記官の処分に対する異議申立事件について,同裁判所が平成25年10月24日付けでした下記決定は,不服であるから抗告を提起する。
原 決 定 の 表 示
主 文
本件異議申立てを棄却する。
異議申立費用は、申立人の負担とする。
抗 告 の 趣 旨
1 原決定を取り消す。
2 大阪簡易裁判所書記官は本案調停事件(基本事件)において相手方が提出した照会書の回答を抗告人に閲覧謄写させ、それの謄本を交付せよ。
との決定を求める。
抗 告 の 理 由
1 民事調停法第34条は不出頭に対する制裁として、「裁判所又は調停委員会の呼出しを受けた事件の関係人が正当な事由がなく出頭しないときは、裁判所は、五万円以下の過料に処する。」と定めている。この条文につき、「本条は、期日の呼出を受けてこれに応じない場合の制裁規定である。」「調停は、裁判官や調停委員会と当事者とが期日に会合し、説得の機会を得て始めてその機能を発揮し得るのであって、この機会を確保することは、調停制度が実効性をもつための最小限度の要求といってもよい。」と最高裁判所事務総局民事局出版の「民事調停法規の解説」には記されている。(疎甲第1号証)
本件本案調停事件(基本事件)についても、2度の呼出しに応じなかった相手方の行為につき、それが正当な理由によるものかどうかの判断を裁判所は下さなければならないが、その判断材料となる資料としては、相手方から返送されてきた照会書以外にはほとんど見当たらない。
ところが、この照会書の回答は現在のところ調停事件記録に含まれておらず、当事者にさえ開示されていないから、その照会書を判断材料とし、それを元に正当事由の有無を認定することはできない。なぜなら、当事者にさえ開示しないまま裁判所が判断したり、手続きを進めることは秘密裁判の性格を帯びることになってしまうからである。
一方で、相手方は、裁判所の要請に応じ、出頭しない理由を提出したと主張するであろうから、その理由が記された照会書の回答を判断の材料としないことには釈然としないし、納得できないであろう。(現に相手方は2013年(平成25年)10月11日付け送付書で「「第1回期日の調停手続き等について」と題する書面(平成25年10月6日付け)を送付頂きましたが、この調停には応じられない旨返答をさせていただいており、送付書類は受け取りかねますので、返送致します。」と裁判所から送付された書類を送り返すほどの強硬姿勢である。)
(疎甲第2号証)
このようにして、相手方からの照会書の回答を今のように取扱うことによって、裁判所は不出頭が正当事由によるものかどうかの判断もできず、立ち往生してしまう事態に直面することになる。
2 調停事件記録は「調停記録とは、特定の調停事件に関して調停裁判所、調停機関である調停委員会または調停を行なう裁判官、その他国家機関等が作成した書類、当事者その他事件の関係人が作成提出した申立書、上申書、答弁書その他一切の関係書類を編綴し、調停事件一件毎に編成された簿冊をいい、裁判所は一定期間これを保存することになっている。」(疎甲第3号証「民事調停法実務総攬」371ページ)「調停記録とは、特定の調停事件に関して、調停裁判所・調停機関・裁判所書記官・民事調停委員その他の国家機関が作成し、または当事者その他の事件関係人が作成もしくは提出した一切の書類を編成した簿冊をいう。」(疎甲第4号証現代実務法律講座「民事調停法」273ページ)などとあるように関係書類「一切」のものを含むとされる。ここにいう「一切」とは「全部、残らず」を強調した言葉であり、もともと、それ以外に裁判所職員が内々に用いる記録などは想定されていない。
しかるに、照会書の回答は事件記録に綴じられておらず、その他にも事件記録に綴じられていない書類があるようである。判例タイムズ臨時増刊2003年11月30日号「大阪簡易裁判所における民事調停事件の諸手続と書式モデル」(疎甲第5号証)によれば、事件経過表という書類が存在するはずであるが、当事者が閲覧できる本案の事件記録の中には見当たらないから、照会書と同様に当事者にも閲覧謄写させないものとして取り扱われているのであろう。事件経過表は調書と同一の効力を有する場合もある書類であり、そのように重要な書類までもが当事者に開示されないとすれば、驚きを禁じ得ないが、同誌に掲載された書式によれば、確かにこの書面の冒頭には「閲覧謄写不可」と記されている(疎甲第5号証)。(付け加えておくならば、「民事調停法実務総攬」では、調停事件期日経過表は「記録に編綴することにしている。」との説明である。疎甲第6号証は「民事調停法実務総攬」に文例として記載された調停事件期日経過表とそれについての本文の説明。)
民事調停と言えども、当事者が事件記録の内容を正確かつ充分に知って、これを吟味検討し、意見を言ったり、反論したりする機会が保障されて始めて公正な手続きと言えるのであり、当事者が何らかの事柄について知らないままの状態で裁判所が手続きを進めたのでは、公正な手続きとは言えない。
民事訴訟においては訴訟記録の一切を当事者が閲覧、謄写できる権利を一般公開原則とは別に当事者公開の原則というが、民事調停においては、なおさら、当事者が事実関係その他についてよく知らされ、納得を得る手続きを経た上で当事者双方の合意が図られるべきであって、そうでなければ、仮に合意に至ったとしてもそれはかりそめの、そして、うわべだけの合意であって、後々に紛争が再燃する火種を残すことになる。
また、民事調停においては、当事者に知らせない措置と言うのは当事者の自主的な取り組みを否定しているようなものであり、心理的にも当事者は疎外されているような印象を持つことになるであろう。その方法は市民の権利が確立されておらず、何事も密かに行なわれる秘密主義が裁判にまで及んでいた中世の時代を連想させ、そのような心情の当事者が紛争解決のため、前向きかつ積極的に取り組むことができるとは思えない。
調停手続きに関する一切の書類を含むはずの事件記録が、一般には非公開であっても当事者は閲覧謄写できる本来のものと当事者に対しても「閲覧謄写不可」のものとに区分して取り扱うことがなされている今の方法、措置は以上のように公正な手続きを阻害し、とりわけ民事調停においては、その円滑な進行を妨げるものとなっている。
3 裁判所は原決定の理由の一つとして、照会書を記録として取り扱うか否かは各裁判所の判断運用に委ねられており、そこに記載された内容によっては、手続きの公正の観点から、適宜、これを補う措置、たとえば、その内容を口頭で伝えるなどの方法がとられていると説明する。しかし、担当者次第の口頭による伝達においては、説明の不足や不正確がつきものであり、記録としても残らない。本案の調停事件においても申立人は照会書に記載されているはずの相手方不出頭の理由を確認できないでいる。これはただ単なる一事件の取扱いや運用方法の問題ではなく、一般性のある手続きの原則に関するものである。裁判所や担当者によってまちまちの恣意的な運用それ自体が市民の権利を侵食することであり、それにより気付かぬうちに被害、不利益を被ることになるのは市民一人一人である。照会書を初めとする事件記録の取扱い方によっては、一般市民の裁判所に対する印象や裁判所との関わり方が大きく変化することもあり得るが、それ以上に、権利や制度にかかわることであるので、一市民としてこれをおろそかにすることはできない。
4 その他にも、本案調停事件における照会書が特別送達という正式の方法で送られていることなどを考え合わせても、この照会書を調停事件記録に綴じず、当事者にさえ開示しない裁判所書記官の措置を認めた原決定は不当であり、特に裁判所にはふさわしくないそのような取扱いを容認した原決定に対し、さらに不服を申し立てざるを得ない。
以上
疎 明 方 法
1 疎甲第1号証 最高裁判所事務総局民事局出版「民事調停法規の解説」50、51ページ
2 疎甲第2号証 調停事件相手方の2013年(平成25年)10月11日付け送付書と返送された書類
3 疎甲第3号証 「民事調停法実務総攬」371ページ
4 疎甲第4号証 現代実務法律講座「民事調停法」273ページ
5 疎甲第5号証 判例タイムズ臨時増刊2003年11月30日号「大阪簡易裁判所における民事調停事件の諸手続と書式モデル」に掲載の事件経過表書式
6 疎甲第6号証 「民事調停法実務総攬」に文例として記載された調停事件期日経過表とそれについての本文の説明。
添 付 書 類
1 即時抗告状副本 1通
2 疎甲第1ないし6号証(写し) 各1通
平成25年10月29日
上記抗告人 梁 視 訓 印
大阪地方裁判所 御中
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